遅読翁ノエルのあれこれ創作書評録

後期高齢者に片足を突っ込みつつある老人です。ビンボーなため、本は買って読むことは滅多になく、もっぱら投稿サイトの作品やWeb出版の書物に目を通すことが多いです。作品は個人の好みと主観で★3以上と思われたものに限定して載せています。好きなジャンルはSF、時代小説、ミステリー、言語系エッセイ、人間学など。

『科学の伝え方』桝太一著を読む

サイエンスコミュニケーションとは、そっくりそのままわたしたちレビュアーにも当てはまるビヘイビア・アイデンティティなのだ。 桝太一さんといえば、テレビでよく見るアナウンサーである。 評者は「真相報道バンキシャ!」(家内が必ず観るので)という番…

本当は怖い京ことば

「京ことば」は、『複雑かつ被支配的な階層社会を生き抜く言語技術』を洗練させたものである。 常々著者に私淑するファンの一員であると公言する身として、これは応募せずばなるまいと応募してみはしたのだが、まさか本当に当たるとは思っていなかった。むし…

チャイナタウン

失意のポランスキーを支えたジャックの優しさが、映画のなかで溶け出し、わたしを押し流していく……。 わたしが初めてジャック・ニコルソンという俳優を知ったのは、いまからおよそ45年前、その当時、恋人だった女性に誘われて行った映画館でのことだった。…

白い恐怖

正直に言おう。イングリッド・バーグマンの美しさ、可愛さに改めて魅入られてしまった! 本評は『本が好き!』のコンセプトが読んだ本の感想発表にあることに鑑み、敢えてハヤカワ新書『白い恐怖』(『The House of Dr. Edwardes』2004年刊)を読んだカタチに…

こころ

愛のあるふりをして放たれる「愛の眼差し」ほど偽善的なものはない。 明治の文豪といわれるひとの小説を読んでみた。日本文学はもとより、浅学菲才で国語の教科書も読んだことのないわたしには、文豪と名の付くひとの小説なぞ縁はなかった。齢70半ばに達せん…

十円札

ああ、自分も弥助にすればよかったのだ。 なんだかだいって、結局、時間を費やしただけだった。俺は思った。こんなことなら、本当に朝日ビイルを片手に弥助をたらふく口にすればよかった。それなのに、アホが足らいで、あの札ビラを風に飛ばしてしまうなんて…

なぜヒトだけが言葉を話せるのか: コミュニケーションから探る言語の起源と進化

言語は生得的なものではなく、「わたし」と「あなた」という個体の共時発生的な二人関係のなかから生じてきたものなのだ。 生来ズホラで、何事にも億劫なものを感じるわたしにしては、とてつもなく辛気臭く、かつ長大な本を読んだ。参考文献のページだけでも…

マンション管理員オロオロ日記

いぶし銀のような人情物語にエールを贈りたい。 本書が出たのを書店で知って、あっという間に読み終えた。思えばいまから、ほぼ一年ほど前のことだが、コロナ禍のいま、再度読み返してみた。やはり読んでよかった。味わいが一度目とは違うのである。内容に深…